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Nest Nishi Sugamo
- Client: Reism
- Location: Toshima-ku,Tokyo
- Usage: a studio apartment
- Construction: Shoyo
- Floor area: 38.19 m2
- Structure: RC
- Date of completion: November/2016
- Photo: Kenta Hasegawa
- はっきり言って、普通のマンションはよくできている。
- 少しづつブラッシュアップを重ねてつくられた「普通」のひながたは、可もなく不可もなくというか、不可ができるだけない。特に住みたいとも思わないけれど、よくできているからそのマニュアルを斬新する必要もないし、アノニマスデザインという意味では、かなりピュアにできているとさえ思う。でも、メンテナンス性を追うあまりに、手触りとか、質感みたいなものに重きを置かなくなってしまった結果、ペンキの壁や無垢材のフローリングがリノベーションの標準仕上げとして、「やっぱり良いよね」と評価されているのだろう。とはいえ、表面の仕上げだけを問題にするのも、少しばかりやり甲斐がないのだけれど、マンションのシステム自体がよくできているので、全く新しい何かを作る必要もない、という自己矛盾からこのプロジェクトはスタートしたのだった。…
- クライアントは投資用ワンルームマンションの改修を多く手がける会社で、例えば仕上げを少し和風にしたものから「大きな本棚のあるワンルーム」とか「キッチンの大きなワンルーム」などの付加価値を付けたキャラクターのワンルームマンションを作っている。既に10をゆうに超えるシリーズがリリースされており、自分達で提案しておいてなんなのだけれど、そこに新たなキャラクターを追加するのは、なんだか椅子取りゲームに参加するようなバツの悪さをにも似た感覚があった。なので、できれば奇をてらった個性的なキャラクターを創造するのではなく、だれも気にしていなかった素直な疑問を、デザインによってさりげなく解決しているしているような部屋ができれば良いな、と思った。
- とはいえ、ワンルームマンションの問題とは何だろうか。全てが一部屋にまとまっている?寝食がわけられていない?キッチンが小さい?収納が十分ではない?正直にいうとそれが問題なのかは分からないけれど、基本的には狭いという状況にたいして生活はできるものの「ちょっと我慢をしいられている状態」をワンルームマンション、と呼んでいるようにも思えた。もう少し広ければ二部屋取れるのに、収納をもっと取れるのに、というあっちを立てればこっちが立たず、のような状態。「狭さ」に対するする問題に優先順位をつけて、どこかを「我慢」するというデザインだ。
- なので、考えたのは狭さを「我慢」ではなくて、できれば他のもう少しポジティブな何かに変換するようなことはできないか、ということだ。「寝室とリビングが一緒」(だからワンルームなのだけれど)という我慢をするのをやめて、寝室をなんとかして作ってみることにした。でも、普通のベッドルームではどう頑張ってもプランが破綻してしまう。全然入らない。あれこれ考えた結果、ベッドルームを極端に小さくするのはどうか、ということを思いついた。セミダブルのベッドのサイズしかない部屋。押し入れにしてはすこし大きいけど、寝室としては極端に狭いスペース。その部屋で、本を読んだり物を飾ったりできるように棚を作り、手元を明るくできるように可動式の照明を付けた。出入り口は全面開けることができる折れ戸が良い。ただ、締め切ってしまうと、エアコンの効かないただの狭い部屋になってしまうので、扉には家具でよく使われるラタンを張りこんだ。メッシュ状なので視線と空気と光が抜け、締め切っても広く感じるし、夏や冬でも快適に過ごすことができる。
- 極端に小さいことで、人が感じる印象を「狭い」から、屋根裏的というか、隠れ家的というか、その場所の質をある種の「楽しみ」に変換することができるような気がした。寝室だけではなくて、極端に小さい書斎も良いかもしれない。漫画喫茶とか、カプセルホテルのように、極端小さい場所は「狭い」以外の質を持つ場合があって、うまくデザインすることで、特にワンルームマンションのようなビルディングタイプにおいては、もっとポジティブにちいさい事を楽しむ家のあり方があるように思う。
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